
MTAセメントは、神経の保存に対して非常に効力を持つ歯科材料になります。保険治療からは外れますが、とても優れている材料ですので、ここでご紹介したいと思います。
MTAセメントとは
MTAセメントは、歯科治療において歯の神経や根管の処置に使用される歯科用材料です。Mineral Trioxide Aggregateの略称であり、複数の鉱物成分を主体とした無機素材から構成されています。水分と反応して硬化する性質を持ち、唾液が存在する口腔内という環境でも安定した封鎖性を発揮することが大きな特徴です。
この材料が注目される背景には、従来の歯科材料では対応が難しかった状況への有効性があります。深い虫歯で神経が露出した状態や、歯の根の先端に穴が生じているケース、あるいは根管治療後の再感染リスクを抑えたい場面など、これまでは「神経を取る」または「抜歯もやむを得ない」と判断されることが多かった状態に対して、MTAセメントは新たな選択肢をもたらしています。
材料としての信頼性が積み重なるにつれて、適用できる治療の範囲も広がっています。開発当初は根管治療の専門的な場面が中心でしたが、現在では神経の保護処置や外科的歯内療法など、幅広い臨床状況で活用されています。改良型の製品では操作性や審美性も向上しており、前歯など見た目に関わる部位への使用もしやすくなっています。
MTAセメント治療の重要性
歯科治療において「できる限り自分の歯を残す」ことは、長期的な口腔の健康を守るうえで根本的に重要な目標です。歯を失うと隣の歯が傾いたり、噛み合わせのバランスが崩れたりと、口腔全体に連鎖的な影響が生じます。入れ歯やインプラントは失った歯を補う手段ですが、天然の歯が持つ機能や感覚を完全に再現できるわけではありません。
MTAセメントが治療において重要視される理由は、こうした歯の保存という観点から直接つながっています。特に神経の保存は、歯の寿命に大きく関わります。神経を取った歯は栄養供給が断たれるため歯質が脆くなりやすく、破折のリスクが高まります。MTAセメントを用いて神経を残せる可能性が生まれることは、その歯を長く使い続けるうえで実質的な意味を持ちます。
また、根管治療の精度と安定性を高めるという観点でも、MTAセメントの役割は大きいです。根の先端の封鎖や穿孔(根に生じた穴)の修復において、従来の材料よりも優れた封鎖性と生体への親和性を発揮することが、臨床的に確認されています。治療の質を高めることで、再治療の必要性が生じるリスクを抑えることにつながります。
MTAセメント治療が選ばれる理由

神経を残す治療のメリット
深い虫歯で神経に近い部分まで進行している場合、従来の判断では抜髄(神経を取り除く処置)が選択されることが多くありました。MTAセメントを使用した覆髄処置では、露出または露出寸前の神経の上に材料を置いて保護することで、神経を生かしたまま歯を修復できる可能性があります。
神経が残ることで、歯は痛みや温度変化を感知する機能を保ちます。これは単なる感覚の問題ではなく、歯に異常が生じた際の早期察知につながります。神経のある歯は異変をいち早く知らせてくれるため、問題の発見が遅れにくくなります。歯質の強度という面でも、神経のある歯は栄養供給が維持されるため、長期的な耐久性に差が生まれます。
高い成功率と持続性
MTAセメントが選ばれる背景には、臨床的な実績の積み重ねがあります。覆髄処置における神経の生存率や、根管穿孔修復後の予後において、従来材料と比較して良好な結果が報告されています。材料そのものの特性として、硬化時にわずかに膨張して周囲に密着する封鎖性の高さと、強アルカリ性の環境をつくり出す抗菌性、そして組織の再生を促す生体親和性が組み合わさることで、治療後の安定した状態が維持されやすくなっています。
持続性という観点では、再感染リスクを抑えられることが長期的な歯の保存に直結します。精密な封鎖が維持されることで、治療した部位に細菌が再び入り込む余地を減らし、再治療の必要性が生じる可能性を低く抑えることができます。
MTAセメント治療の流れ
MTAセメントを使用する治療は、まず口腔全体の状態と対象となる歯の詳細な検査から始まります。レントゲン撮影で根の形態や周囲の骨の状態を確認し、MTAセメントによる治療が適応できるかどうかを判断します。虫歯の深さや神経の状態、感染の範囲などを総合的に評価したうえで、治療の方針を決定します。
治療に入る前に、処置の内容と目的、費用、来院回数の見通しについて説明します。MTAセメントは保険適用外となる場合があるため、費用については事前に明確にお伝えします。
処置では、虫歯を丁寧に除去したうえでMTAセメントを必要な部位に填入します。材料が硬化するまでに時間を要するため、その日は仮の封鎖をして次回の来院まで待つことになります。硬化を確認した後、最終的な修復処置(詰め物や被せ物)へと進みます。覆髄処置の場合は、神経が正常に反応しているかどうかを一定期間観察することも治療の一部です。
処置後しばらくの間は、該当する歯に強い力がかからないよう意識していただくことが重要です。材料と組織が安定するまでの期間、硬いものを噛む際には注意が必要です。経過に問題がなければ、次第に通常の食事に戻していただけます。
MTAセメント治療に関するよくある質問

神経を残せるかどうかは、診察前にわかりますか?
診察とレントゲン撮影を行わないと判断はできません。虫歯の深さや神経の状態、感染の有無などを確認したうえで初めて適応の可否を判断します。「神経を取るかもしれない」と言われた方も、一度当クリニックへご相談ください。実際に状態を確認することで、MTAセメントを使った保存の可能性が残っている場合もあります。
治療中や治療後に痛みはありますか?
処置中は麻酔を使用するため、強い痛みを感じることはほとんどありません。処置後は数日間、咬んだときの違和感や軽い痛みが出ることがあります。これは材料と組織が馴染んでいく過程で生じることが多く、時間の経過とともに落ち着いていきます。強い痛みや腫れが続く場合は、当クリニックへご連絡ください。
保険は適用されますか?
使用する状況や処置の内容によって異なります。保険適用外となるケースが多いため、治療計画のご説明の際に費用についても事前に明確にお伝えします。費用に関してご不明な点があれば、診察の前にお問い合わせいただくことも可能です。
他の歯科医院で「抜歯が必要」と言われましたが、相談できますか?
もちろんです。他院での診断に疑問がある場合や、別の選択肢があるかどうか確認したい場合は、当クリニックへお越しください。現在の歯の状態を改めて確認したうえで、治療の可能性についてご説明します。以前に撮影したレントゲン画像があればご持参いただくと、状態の把握がより正確になります。
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